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福岡高等裁判所 昭和41年(ネ)506号 判決 1967年7月19日

主文

控訴人と被控訴人キヤプテンシヤツ株式会社間の原判決を次のとおり変更する。

控訴人は被控訴人キヤプテンシヤツ株式会社に対し、金四九万〇、一六五円とこれに対する昭和四〇年一二月六日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

被控訴人キヤプテンシヤツ株式会社のその余の請求を棄却する。

右当事者間の訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

控訴人の被控訴人シルバーシヤツ早瀬株式会社に対する控訴を棄却する。

右当事者間の控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は「原判決を取消す。被控訴人等の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする。」との判決を求め、被控訴人等はそれぞれ「本件控訴を棄却する。」との判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張ならびに証拠の関係は、左記のとおり付加するほか、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。

控訴人において、

「仮に、控訴人が被控訴人キヤプテンシヤツ株式会社に対し訴外株式会社まからず屋の債務引受人として、本訴請求にかかる金員を支払う義務があるとしても、右訴外会社は昭和四二年二月四日右被控訴人に対し金九、九〇〇円の弁済をなしたので、控訴人の債務も右の限度で消滅した。」

と述べた。

(立証省略)

理由

控訴人の債務引受および訴外株式会社まからず屋の会社更生手続に関する抗弁についての当裁判所の判断は、原判決の理由と同一であるから、その四枚目表一〇行目から五枚目裏五行目までの記載を引用する。

ただし、原判決五枚目表二行目から五行目までを、「控訴人は右甲第一号証の一、二をいずれも被控訴人等の強迫によつて作成されたものと主張するが、その主張に副う当審証人中尾輝子の証言ならびに原審および当審における控訴人本人尋問の結果は、原審証人土井康利、同太良木政秀の各証言に照らし、にわかに採用することができない。これ等の各供述を綜合すると、被控訴人等の使用人である右土井康利、太良木政秀において控訴人に対し前記債務の引受を求めるについて、かなり強硬に交渉を続けた経過が窺えないでもないが、せいぜいその程度であつて、右土井ないし太良木等が控訴人を威迫したとか、控訴人がこれに畏怖して右甲号証を作成したとまでは、未だ認めることができない。他に以上の認定を左右するに足る証拠はない。」と訂正する。

そうだとすると、控訴人は被控訴人等に対しそれぞれ前記各債務引受金とこれに対する各弁済期の翌日より支払ずみまで商法所定年六分の割合による遅延損害金を支払う義務があることになる。

そこで、控訴人の一部弁済の抗弁について判断するに、当審における控訴人本人尋問の結果とこれにより真正に成立したと認める乙第四号証によれば、控訴人主張のごとく昭和四二年二月四日、もともと本件主債務者である訴外更生会社株式会社まからず屋管財人森正之より被控訴人キヤプテンシヤツ株式会社に対し、金九、九〇〇円の弁済がなされている事実を認めることができる。右認定に反する証拠はない。

かくて、右金九、九〇〇円を民法第四九一条により弁済充当すると、控訴人の被控訴人キヤプテンシヤツ株式会社に対する残債務は、債務引受金四九万〇、一六五円とこれに対する昭和四〇年一二月六日以降年六分の割合による損害金(すなわち、右弁済金は昭和四〇年八月六日より同年一二月五日までの損害金に充当される)となることが、計数上明らかである。

以上の次第であるから、被控訴人キヤプテンシヤツ株式会社の本訴請求を右の限度で正当として認容し、その余を失当として棄却すべきところ、原判決はこれと一部結論を異にするので、被控訴人キヤプテンシヤツ株式会社に関する部分を一部変更することとし、一方被控訴人シルバーシヤツ早瀬株式会社の本訴請求は全部理由があり、これを認容した原判決は正当であるから、被控訴人シルバーシヤツ早瀬株式会社に対する控訴はこれを棄却することとする。

よつて、訴訟費用の負担について民訴法第九六条、第九二条、第八九条を各適用して、主文のとおり判決する。

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